モノや情報が溢れかえり、私たちは寝ているとき以外は常にモノに囲まれ、情報に惑わされて必要でないものをまた手に入れては後悔することを繰り返しています。買うことが善(よし)とされていた高度成長期を過ぎ、気付けば何年も使っていないモノたちが大きな顔をして家の中を占領している。そんな光景に愕然としたことはありませんか?

部屋にカーテンさえもない、究極のミニマリスト

ミニマリストという生き方が注目を集ている、とテレビ特集を見たときのこと。
ある男性の部屋が紹介されていました。ワンルームのフローリングの部屋には小さな机がひとつ。ひとり用のキッチンにはお皿とカップが一組。服も3着ほど、そしてカーテンさえもつけずに部屋の中は丸見え状態でした。

「えっ!カーテンはしたほうがいいんじゃない?夜はすべて丸見えでしょう。男性だからいいのか?気にしないの?」と老婆心ながら心配してしまいました。テレビの中の彼は「身も心もすっきり軽くなり快適そのもの!」と笑っていました。

これほど徹底的にモノを持たないというのは少々行き過ぎかもしれませんが、私のまわりを見ても、また私自身も、モノが溢れた環境からできる限り脱したい、と思っている人は少なくありません。「断捨離」という言葉がこれだけ浸透した現在、世の中の大きなうごきとなっていることは見て取れます。

大量生産・大量消費時代に対する反発感

40代の人は高度成長期真っ只中に生まれ、家の中にどんどんあらたなモノたちが増えていったことを覚えているかもしれません。私の家も冷蔵庫、洗濯機、テレビはすでにありましたが、父親は企業戦士として夜遅くまで働き、新たに車を買う、食器セットを買う、二段ベッドを買う・・・・とにかく買う!買う!買う!の連続を経験してきました。転勤族の社宅住まいでしたから当然家の中はどんどん狭くなり、大して居心地もよくない家のサイズに到底見合わないソファーセットが家主のような顔でデンと構えていました。

そんな中で育った私でさえ、ソファーはもちろん最初から買わないし、ベッドもいらない布団で十分、食器は小さな棚に入る分だけ、とモノをどんどん処分しているのですから、20~30代の若い世代がより違和感を持つのは無理もないのかもしれません。ミニマリストという概念に魅力を感じるのは、「どんどん買って、どんどん消費しよう!」という大量生産時代、大量消費時代に対する激しい反発なのではないかと感じています。

もちろん、先のカーテンさえもつけない彼のような人が不便なく生活できるのは、ITテクノロジーの発達の恩恵が大きいのでしょう。パソコン一台、スマホ一台でできることが驚くほど多くなり、今まで必要と思われていたものさえ持つ意味がなくなってきているのです。固定電話なんてもはや家にある必要はないですよね!? またシェア文化が広がりをみせ、個人ごとに購入していたものを仲間で使うライフスタイルも大いに影響していると思います。

カスタマイズされるモノの価値観

大量生産時代、大量消費時代を生きてきた親世代をみていて、「モノを手に入れれば、生活もよくなり、しあわせになれる」ということが妄想だったとわかってしまった。欲しいものを買うために働き、お金を稼ぎ、モノに変える。その先に希望があると思っていたから、無我夢中に働いていた世代。戦後のなにもない時代を経験しているからこそ、絶対にそこに戻ることはできないという恐れが世の中を突き動かしていたのだと思います。それこそが日本を豊かにしたことも事実です。

私たちはその子どもとして選択の余地はなく育ちましたが、自分が大人になった今、どのような生活を選びとるのかは自由意志に任されています。前にならえをやめて、自分の頭で考えて別の道を歩き出す人が少しずつ出てきて、あらたな概念が生まれます。今はその過渡期であり賛否両論、いろいろな意見がありますが、「人はモノでは幸せになれない」ということは明らかです。

これからは、とにかく身の回りのモノを処分する「断捨離」はさらにつづき、いったんなくなった状態から今度は「自分にとって本当に必要な大切なもの」を見出す時代になっていくと思います。それは人によってまったく違うものだから、大量生産や大量消費のスタイルはもは何の役にも立ちません。

世の中の流れに惑わされず、なにが必要か考えるクセをつける

そうはいってもシーズンごとに流行りのファッションを追っかけたり、希少価値と感じて長蛇の列に並ぶという人たちは存在するし、これからもいなくなりません。彼らのようなひとたちがいるからこそ、経済成長~というような言葉が日々ニュースを賑わし、景気がよくなったとか悪くなったとか大騒ぎしているわけです。

今年の2月からは、プライムフライデーなるものが始まるようです。

経済産業省と経団連や小売りなどの業界団体は個人消費を喚起するため、毎月末の金曜日を「プレミアムフライデー」とする取り組みを来年2月24日から始める。企業が従業員に対して午後3時には仕事を終えるよう呼びかけ、長時間労働の是正など働き方改革にもつなげる考えだ。

引用元: 日本経済新聞 2016年12月12日付 

時代がすでにかわっているのに「もっと買え!もっと買え!もっともっと!」と個人消費を喚起する国の政策ってどうなんですかね?この手の政策が出てくるにつけ、どういう人たちが集まって決めているのかなんとなくイメージが浮かびます。

どうして若い世代が消費しなくなってきているのかその背景に何があるのか、とかすっとばしている気がしてなりません。「ミニマリスト」なんてものが増えてしまったら国や経済界は困るわけで、なるべく考えない、なるべく見ない、考えるより先に魅力的(と思われる)商品やサービスをどんどん供給する。まるで滑稽な芝居を見ているようです。

テレビの報道やネットの世界、ソーシャルメディアでの反応に一喜一憂して反応的な生活を続けるかぎり、世の中のうごきは断片的にしか見えないし、客観的に判断はできません。常にどこからくるかわからない得体のしれない不安に麻酔をしながら、とりあえずなんとなく生きていくことになってしまいます。

これから時代はどうなりどこへ向かうのか、もちろん不安がひとつもない人はいません。

でも、自分の周りでおきることをよく観察して、体験し、話をして、自分で考え、行動を起こすことで、不安はひとつずつ消していくことができるのです

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