キヤノンITS、在宅勤務者をカメラで監視
在宅勤務の広がりで専用の情報システムが増えている。キヤノンITソリューションズ(ITS)は2月、社員がパソコンの前にいることをカメラで確認し、勤務時間に反映するシステムを発売する。「そこまでする必要があるのか」との声も上がりそうだが、社内外で浮上した問題が発端だった。

「きちんと仕事をしているか確認ができない」。システムの開発を担当したキヤノンITSの石原保志さん(52)は営業を通じて多くの企業の相談を受けていた。新システムはパソコンに備えたカメラで顔を撮り、顔認証機能で登録した本人の在席と離席を判別する。

引用元: 日経産業新聞 2017年1月17日付

規制すれば人は管理できるという発想の愚

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こんなことに莫大な開発コストと労働力を消費することに私はため息が出ました。

きちんと仕事をしているのか確認ができない

この言葉が物語っているのは、見えないところで本当に仕事をしているのか疑心暗鬼になる、ということ。つまり、サボっているのではないか?ということです。

私が在宅勤務していることを話すと、「えっ。じゃあ、さぼってもわからないんじゃないですか?」と言われることが非常に多いのです。ただ、このような言葉の背景には在宅勤務の実態がよく知られていない、という事実もあります。

こちらに詳しく書きましたので同じように感じた方はご覧ください。

上司の目があるかないかが仕事をする基準になっていると、上司がいなければ仕事はしない、ということになってしまいます。そのような職場は、出張しているあいだに部下がきちんと仕事をしているかどうか心配で気になってしょうがないでしょう。

オフィスにカメラを設置して出張先から逐一チェックするのでしょうか。
そして、真面目にパソコンに向かっていたら「よし。ちゃんと仕事をしているな」と安心するのでしょうか?

机に向かっていても、ゴシップを見ているだけかもしれないのに。

信頼がなければ成り立たない在宅勤務の現実

このシステムを開発するに至ったのは、ちゃんと仕事をしているか不安だ、確認できない、という多数の企業からの声だそうです。

どれだけの企業が安易に在宅勤務を取り入れているのでしょうか。

「在宅勤務OK!子育て中の方でも安心して仕事ができます!」

こんな文字が求人情報にあれば理解のある企業と印象付けられるかもしれませんが、お互いがどんな人でどんな仕事の仕方をするのかまったくわからない中で、いきなり在宅勤務を許可することなんて考えられません。なぜなら、見えないところで仕事を任せるということは、根底に「信頼」がなければ成り立たないから。

私自身在宅ワークという勤務方法を経験して、日本の企業が在宅勤務の働き方を取り入れるにはいくつか越えなければならない壁があると実感しています。さらに少子高齢化社会において育児や介護によりこのような勤務スタイルの構築は急務であると感じています。

けれど、これらの壁を越える前に、なによりも人としての信頼関係がなければ成果も結果もあり得ません。そうでなければ、成果が上がるなら何をしてもよい、ということになってしまいます。極端なことをいえば「手段なんか選ばない。とにかく結果を出せばいいんでしょ!」という人を認めてしまうことになります。

在宅勤務の人に限った話ではありません。自宅であろうが出勤していようが勤務方法に関係なく、仕事をするうえで「信頼」はなにより重要であると私は考えています。

その信頼さえも築く努力もせずに「在宅勤務」という流行りの形式だけ取り入れて、姿が見えないからといって監視カメラを設置する。

本末転倒です。

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